百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、雅さんの姿が見えなくなっても
ぽかん、としてその方向を見つめる。
………お礼………言われた……。
私は、何とも言い表せない感情が胸の奥から湧き上がってきた。
……変な女…って…。
遥にも言われたことあるけど、そんなに私って変なのかな…。
確かに、お人好しで死んだらバカみたいかも……。
その時芝狸が、ふぅ…と息を吐いて言った。
『竜ノ神を逃したことは仕方ない。
今日のところは、解散するぞぃ。また明日事務所に集まってくれんか。』
私は、その言葉を聞いて、はっ、とする。
そして、胸に残る鈍い感情を抑えながら、芝狸に尋ねた。
「ねぇ、遊馬は…?
遊馬は本当に、カンパニーの仲間になっちゃったの……? 」
私の言葉を聞いて、周くんも厳しい顔で芝狸を見る。
芝狸は、視線を落として、小さく答えた。
『……そうじゃな…。
本物の面なら……完全に操られてしまうからな…。遊馬のことは、ワシも色々と手を回しておく。』
芝狸の言葉に、私は心の中の何かが、音を立てて崩れ去るような気がした。
お面をつけた遊馬が頭に思い浮かぶ。
………遊馬…
周くんに攻撃した…
私のことも撃とうとした…
紺の言うことを聞いて、竜ノ神を落とそうとした…!
……ほんとに………敵になっちゃったの…?
「……相楽くん……。」
周くんの哀しみの声が、金色の桜がはらはらと舞う空に、虚しく響いた。