百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私が動揺しているのを見た雅さんがはぁ…と息を吐いた。
「……何、その顔。」
眉間にシワを寄せる雅さんに、私はおずおずと話しかける。
「あの………雅さんは……」
すると、雅さんが私の言葉を遮って言った。
「“雅さん”じゃなくて、“雅くん”だったってことだよ。
………別に女装趣味とかじゃないから。紺の野郎に命令されて無理やり女のフリしてるだけ。」
!
「えええええっ!!!」
私は、今世紀最大のショックを受けた。
み……
雅さんが……
雅さんが、“男の娘”!
じゃなくて、“男の子”!!!!
嘘!信じられない!!
どこからどう見ても、美女だよ!
その時、いつかの遥のセリフが頭に蘇る。
“あいつは“彼女”じゃねぇよ。…たぶん、一生彼女にはならないな。”
あれって、雅さんが男だったから、彼女にはならないってことだったんだ!
………まだ信じられない。
私は、そぉっ、と目の前の金髪の“彼”を見て口を開く。
「あの…雅くんは……」
「“くん”とかやめて。バレるから。呼び捨てでいい。」
バッサリとそう言い切られた私は、ごくっ、と喉を鳴らして言う。
「…雅は、なんで紺から命令されて、女の格好をしてるの?」