百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

私は、少し驚いて、無言で頷く。


な…なんか、雅に心配されるようなこと言われるの、慣れないな…。


すると、私が何を考えてるのか察したのか、雅が、ぱっ、と視線を逸らして言った。


「…別に、あんたを心配して言ってるんじゃないから。

それを今度目の前でやられて、死なれたら、目覚め悪くなるから言ってんの。」


あぁ…。

そういうことか。


雅は、少し居心地悪そうに頭をかくと、
「…じゃ、俺は遥の様子見に来ただけだから。」と言って、背を向けた。


その時、私は、はっ!として雅を呼び止める


「待って!雅!」


雅は、ぴた、と立ち止まって無言で振り向く。

私は、震える声で、雅に伝えた。


「あの……遊馬の………

遊馬のこと、紺から守って……!」


雅は、少し目を見開いて、複雑な顔で私を見た。


「また、いつでも帰ってきてって。

待ってるからって、遊馬に伝えて!」


私がそう言うと、雅は、

「…言うだけ言っといてやるよ。……まぁ、意味ないと思うけどな。」

と静かに言うと、そのまま扉をパタン、と閉めたのだった。


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