百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


しぃん………。


静寂が、部屋を包む。


…遊馬のことで、今の私に出来ることは、雅にこう伝えることしかないけど

いつか…いつか今まで通りの事務所に戻れる日が来たらいいな…。


「……なぁ。」


その時、遥が私に向かって口を開いた。

じっ、と何かを考えるように私を見て、そして続ける。


「あの相楽って奴……………」


遥が、そう言いかけて、目を伏せた。


…?


私が遥の言葉の続きを待っていると

遥は視線を、ふぃ、とそらして「…いや、やっぱなんでもねぇ……。」と呟いた。


………?


何を言いかけたの?


私が遥を見上げると、遥は何事もなかったかのように部屋の奥に入り、着替えを手にした。

そして、スタスタと歩いて、私の隣を通り過ぎながら言う。


「……ま、とりあえず風呂借りるわ。

詠も早く飯を食え。」


私は、なんとなくはぐらかされたような気がしたけど、深く遥の言葉の続きを追求しようとはしなかった。


………そして。

ここから、私と遥の期間限定の同居生活が始まったのです。



*第2章・完*


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