百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
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《遥side》
詠と別れた後、俺は高校に休みの連絡を入れすぐにカンパニーへと飛んだ。
ギィ…。
社長室の重い扉が開く。
部屋の中を見ると
そこにいるはずの紺の姿はなく、代わりに、黒スーツを着たメガネの男が立っていた。
「………奴はどこだよ。」
低い声で尋ねると、黒スーツの男は、クイ、とメガネを押し上げて答えた。
「紺様なら、研究室に行っておられます。
………何かありましたか?」
俺は、キッ、と彼を睨んで口を開く。
「心当たり、あるだろ?
……あの狐火のニュース、お前らの仕業だな?」
すると、黒スーツの男はメガネの奥の瞳を
ギラリ、と光らせて答えた。
「……えぇ。少し大事になってしまったので紺様は新しい狐の面の開発を始めました。
……貴方はただ、今まで通り、カンパニーの指示に従っていればいいんですよ。」
その時、俺の中で何かが切れた。
……“新しい狐の面”だって?
「……お前ら……また雅に無理やり研究させてるのかよ。」