百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


****


「よし、夜ご飯できた!」


事務所からアパートに帰ると、私は二人分の夕食を作った。


…今朝、遥がリクエストした通り、ちゃんとオムライスにしてあげたんだから。


遥の分のオムライスに、ケチャップで
“バカ”とラクガキする。

これは、今朝私を置いてけぼりにした罰。


ちらり、と時計を見る。

針は、午後八時を指していた。


……遥、遅いなぁ…。


いつもどれぐらいに帰ってきてるかなんて、分からないけど…。

もうそろそろ帰ってくるかな?


私が窓の外を覗くと、その時、ギシギシ、とおんぼろ階段を登る音がした。





……遥、ちょうど帰ってきたんだ?


私は、くるり、と玄関の方に視線を向ける。

しかし、遥は私の部屋に入ってくる様子は
ない。


バタン!


隣の部屋の玄関が閉まる音が聞こえた。





遥ってば、私の部屋に住んでるってこと
忘れたの?

< 189 / 512 >

この作品をシェア

pagetop