百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

…もぅ、オムライス冷めちゃうよ。

今朝のことだって、ちゃんと文句言ってやらなきゃ。


私は、すっ、と立ち上がって玄関から外へ
出る。

そして、遥の角部屋の前まで来ると、玄関をノックしながら言った。


「遥ー?帰ってきたの?

ご飯出来てるよ。何してるの?」


………。


いくら待っても、返事がない。


………?


扉のノブに手をかけると、カチャ、と小さな音がした。


開いてる………。


ギィ……、と遥の部屋の玄関を開ける。


「……遥?」


私は、そおっ、と中を覗き込んだ。


中は明かりも点いていない。

真っ暗だ。


……何やってるの?アイツ……。


すると、ふと、部屋の奥へと続く廊下に、
小さな赤い染みがあることに気がついた。


……?

……なに……これ…?


近づいて見ると、それは真新しいものだった


まさか……これ、“血”……?


ぞくっ!と体が震えた。

嫌な胸騒ぎがして、私は意を決して一歩踏み出す。


「遥?入るよ……?」


靴を脱いで、部屋へと入る。


恐る恐る奥の部屋へと踏み込むと

そこには、服に血がにじんだまま、ベッドの横に座り込んでいる遥の姿があった。





体温が、一気に下がる。


「遥!!」


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