百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜





私は、思考が停止した。

動揺してドキドキしていると、遥が扉越しに私に言う。


「早くしろよ。

……俺に自分で取れって言うのかよ?」


「…っ!

絶対出てこないでね、変態!」


私は慌てて叫ぶと、急いでタンスへと走り、タオルを一枚手に取った。


…なんなの、アイツ!

明日からタオルを常に脱衣所に置いて
おかなくちゃ…。


私は、扉の前にやってくると
遥に向かって呼びかけた。


「ほら、持って来たよ…!

扉の前に置いておくからね。」


さすがに脱衣所には入れない。


そう言って、そっ、と離れると

ガタガタ、と建てつけの悪い扉が少し空いて濡れた腕がすっ、と出てきた。


っ!


思わずくるり、と脱衣所から体を背ける。


…な…

なんでこんなにドキドキしてるんだろ。


別に、ちょっと腕を見ただけなのに。


と、その数十秒後。

ガタガタッ!と、扉が開く音がした。


驚いて後ろを振り返ると

目の前に、少し筋肉質な体が現れた。


「?!!!」


一瞬思考が停止する。

そして、状況を理解した瞬間叫ぶ。


「ば……ばばば…バカ!!!!

なんで服着てないのよ?!」


「下はスウェット履いてんだろ。

…別に、俺、男だし。気にならない。」


?!


遥は、首にタオルを巻いて
平然とした顔で私を見ている。


そ……

そういう問題じゃないでしょうが!!


私は気になるよ!


あー、もーっ!!

本当にコイツは………!!!!!


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