百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「とにかく、ここに住む間はその格好禁止!
次やったら、追い出すからね!」
すると、遥は少し目を細めて
その後ニヤ、と笑って口を開いた。
「俺は詠になら見られてもいいぜ?
…もちろん、触ってもいいし……」
「触るか!バカ!!」
私は、ぴしゃり!と遥に言い放つと
急いで自分の着替えとタオルを持って
脱衣所に駆け込んだ。
扉を閉めた瞬間、足の力が抜ける。
へなへなと座り込んだ私は、真っ赤になった頬に手を当てながら心の中で考えた。
…アイツ、絶対からかってる……!
本当に、心臓もたないってば…っ!
私は、遥の体を記憶から抹消しながら、一人お風呂に入ったのだった。
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「……はぁ…。
頭が、ぼーっ、とする……。」
お風呂から上がり、髪の毛を乾かし終わった私は、ゆっくりと脱衣所から出た。
……なんか、のぼせたみたい……。
もー…!絶対、遥のせいだ…!
複雑な気持ちで部屋に戻ると
私は目の前の光景に目を見開いた。
「…なんで私のベッドで寝てるの…?」
そこには、すー、すー、と寝息を立てて
ベッドに横たわる遥がいた。
布団から藍色の髪が見える。
……私に、カーペットで寝ろってこと?
ここ、私の部屋だってば!
…もー、本当にマイペース。
私は、ずんずんとベッドに近寄って
遥に向かって声をかけた。
「遥、起きて。遥は床で寝てよ!
……ねぇ、聞いてる?」