百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
すると、遥は私を抱きしめたまま
耳元で答える。
「…………一緒に寝るか。」
!
待って、聞こえなかった。
今のは幻聴だ。
今、遥はなんて言った?!
「変なこと言ってないで、離してよ…!」
私が心臓バクバクでそう言うと
遥は私の耳元で甘く囁いた。
「…嫌なら力づくで抜け出してみな。」
「っ!」
私は、体がぴくん、と震えた。
絶対からかってる…!
必死に抜け出そうとするが、遥は一層私を
強く抱きしめて離そうとしない。
遥の体温が背中越しに伝わってきて
私は心臓が鳴り止まない。
……本当に、限界……っ!
私が一生懸命もがいているのに
遥は何ともないようにビクともしない。
離そうとするどころか、遥は私の肩に
後ろから顔をうずめた。
「……詠、いい匂いすんな。
俺と同じ匂いする。」
!
そりゃ、同じシャンプー使ってますもんね!
もう、いい加減にしてっ!
「くすぐったいから!離してよ!」
私の声に、遥は「やだ…。」と小さく答える
……この………!