百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
…?
「なに?周くん。」
周くんは、私を見つめながら言う。
「今日は…有給休暇みたいなものだから。
いつもとは切り替えて、楽しんでね。」
…え?
きょとん、として周くんを見つめ返すと、周くんは、ふっ、と笑って言った。
「相楽くんがいなくなってから、佐伯さん、全然笑ってなかったからさ。」
はっ、とした。
そうだったんだ…
全然気づかなかった。
周くんは、前を向いて、続ける。
「相楽くんのことは佐伯さんのせいじゃないから。
……今日は、そのことは気にしないで、
たくさん笑ってくれると嬉しいな。」
!
とくん、と、胸が鳴った。
……もしかして周くんは、調査とは別に
落ち込んでた私を励ますために、ここに
連れてきてくれたの?
周くんの気づかいが心に染みる。
………やっぱり、好きだな。
私は、こくん、と頷いて答えた。
「ありがとう。周くんも一緒にたくさん
笑ってね。」
私の言葉に、周くんは、優しく微笑んで頷いた。
……今日は、運勢見てくるの忘れちゃった。
だけど、きっといい日になる。
私はそう心の中で呟いて、ショッピング
センターへと入って行ったのだった。