百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、はっ!として首を横に振る。


「ううん、何でもない。」


………見間違いだよね。


ここに、遥がいるわけがない。


遥は、今日の朝、私が周くんと出かけることを言ったら、

「俺は一日中ここで寝てるから、せいぜいアピールして来い。」

なんて、からかうように言っていた。


……あぁ。


アイツの幻を見るなんて、どうかしてる。

私は、ぶんぶん、と遥の顔を頭からかき消すと、周くんに向かって笑って言った。


「周くん、最初はどこに行く?」


周くんは、うーん、と少し考えて、答えた。


「じゃあ、せっかく来たんだし、いろいろお店みてみようか。」





いいの?!


周くんは、前の店を指差して言った。


「じゃあ、あの雑貨屋さん見てみない?」


きゃー!


周くんとお買い物できるなんて…夢みたい。


私は、こくん、と頷いて、周くんと一緒に
店に入っていったのだった。


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