百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


そっか…。


遥は、無理やり、紺に呼び出されたの…?


するとその時

遥と反対側にある水族館の入り口付近に
見覚えのある金髪のシルエットが見えた。


「…!周くん、雅もいるよ!」


私の言葉に、周くんが、ぱっ、と水族館の方を見た。

雅は、きょろきょろ、と辺りを確認しながら水族館の中に入っていく。

私が、じっ、と見つめていると、周くんが
ぼそり、と言った。


「…あいつらを尾行すれば、紺に辿り着けるかもしれない。」





確かに……。


私は、ごくり、と喉を鳴らして、手のひらを握りしめる。

その時。

視線の先の遥が、すっ、と歩き出した。





遥が動き出した!

追いかけなきゃ…!


私が立ち上がって、遥を追おうとした

次の瞬間。


ぎゅっ!


私の手を温かい感触が包んだ。


………っ!


驚いて振り返ると、周くんが私の手を握っていた。




え…!


「あ…周くん?」


私がそう呟くと、周くんは、はっ!とした
様子で目を見開いた。

そして、少し視線を私から逸らして口を開く。


「……狐の面の件で紺が動いているなら、
研究員の雅さんを追いかけた方がいい。

アイツのことは…今は……考えないで。」

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