百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


……!


周くん………?


いつもと少し違うような周くんを黙って見つめていると、周くんはすっ、と立ち上がり

私の手を繋いだまま水族館へと歩き出した。





て………

手が…………!


私は、ちらり、と周くんの顔を見上げる。


ど、どうしたのかな?

いつもは手なんか、握ったりしないのに…。


ドキドキする胸を落ち着けながら、私は周くんの隣を歩く。

そして、雅の入って行った水族館の自動ドアを通り抜けた。

その瞬間。

目の前にガラスの水槽が、ぱぁっと広がる。


……綺麗………。

本当に、海の中にいるみたい………。


暗い廊下をコツコツ、と歩いていく。


ふと、水槽に映った自分の姿が目に入った。


……本当に恋人同士みたい……。

いつまで手を繋いでてくれるのかな…?


私がそう思っていると、ふいに周くんが
口を開いた。


「ねぇ、佐伯さん。

この水族館…変じゃない?」


え?


私は、周くんの言葉に、辺りを見回す。

すると、確かに違和感がする。


「……お客さん…誰もいないね。」


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