百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


────ガタンッ!


その時。

廊下の奥から、大きな音が響いた。




何…?


周くんは、キッ、と目を細めて、
水族館の奥へと進んでいく。


周くんの背中から、前を覗くと

そこには目を疑う光景が広がっていた。


「……な……何これ………!」


そこには、真新しいはずの水槽に、
大きな蜘蛛の巣が張り巡らされていた。

驚いて辺りを見渡すと、あらゆるところに
蜘蛛の巣が作られている。

そして、その蜘蛛の巣の前に、三つのシルエットが見えた。


「…あぁ、やっと来ましたか。

芝の部下さん?」


そう言って私たちの方を見つめたのは、
紫の着物を着た、紺だった。

その横には、雅と、そしてあの黒スーツの
男性がいる。

雅は、私たちを見た瞬間

目を見開いて叫んだ。


「なんで、ここに来たんだよ!

詠!早くここから…………」


その時、紺が鋭く雅を睨んだ。

ぴたり、と雅の声が止まる。


…何……?


心臓が、不吉な音を奏で始める。


「……これは一体どういうことだ?

ここで何を企んでいる?」


周くんが、警戒しながらそう言った。

すると、紺はニヤリ、と笑って

いつもと変わらない細く閉じられた瞳で
私たちをとらえた。


「君たちが想像している通りのことですよ。

……十分、収穫を得られました。」





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