百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、ぞくっ!と身震いがした。
やっぱり、紺はここにいたお客さんを全員
狐の面の対象にしたんだ。
…なんて奴なの…!
すると、紺が、すっ、と黒スーツの男を見て口を開いた。
「八雲。まだ面は残っているよね?」
“やくも”と呼ばれたその男は、頷いてスーツの内側に手を入れて薄い面を取り出した。
その面は、前に見た、遊馬の面とは全く違った。
見るからに、邪悪なオーラが放たれている。
紺が、八雲から面を受け取りながら言った。
「これは、凶暴化させた妖のエネルギーを入れた面です。
……前のものとは比べものにならないぐらい性能がいいんですよ。」
!
その時、遥の言葉が頭に蘇ってきた。
“……妖の血だよ。
……救えなかった……。”
遥が血だらけで帰ってきたあの日、言ってたことって…
まさか、このお面を作る時のことの話…?
妖の命を犠牲にして、あのお面を作ったんだ
それを……
遥は止めようとしてたんだね……。
その時、紺が、カッ!と、目を見開いた。