百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


「何をする気…!」


横にいた雅が、紺に向かって叫んだ。

すると、紺が不敵な笑みを浮かべて答えた。


「せっかくですから…この面の力を
試してみようと思いまして。」





なんだって……?


と、次の瞬間。

紺が、持っていた狐のお面を私に向かって
投げつけた。





咄嗟に目を瞑る。


…や………!


パァン!


その時、一発の銃声が響いた。

驚いて目を開けると、私の目の前に、金色の鬼火銃を手にした周くんが立っていた。

銃口からは、細く煙が出ている。

コン!、と撃ち抜かれた面が、床に落ちた。

紺は、ぴくり、と眉を動かす。


静寂に包まれた水族館に、周くんの低い声が響いた。


「……もう二度と…僕の仲間は連れて行かせない。

彼女には手を出すな…!」





鋭い周くんの視線が、紺を貫く。

心臓がドクドク、と鈍く音を立てた。

雅が、はぁっ、と安心するような息を漏らした時

紺は、すっ、と目を細めて口を開いた。


「…あの面を撃ち抜くとは……。

さすが芝の部下なだけありますね。」


紺が、コツコツ、と水槽の蜘蛛の巣に
近づいて呟いた。


「…仕方ありません…。

今日こそ、芝の勢力を削がなくてはいけませんからね。」





え…?


私と周くんは目を見開く。


その時、八雲がギラリ、とメガネの奥の瞳を輝かせた。


「紺様。準備が整いました。」



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