百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


周くんが、静かに言った。


「姉さんが、九条の目の前で死んだことは、九条本人から聞いたんだ。

…それからは…まぁ、今みたいな関係さ。」


確かに、周くんの話を聞けば、遥は周くん
との約束を破って、カンパニーに寝返った
ように思える。

周くんが、遥をすごく憎んでいる気持ちも、当然だ。


………でも……


でも、遥はそんなことするような人じゃ……


私は、周くんに尋ねた。


「…お姉さんの事故って、どういう事故
だったの?」


私が、少し躊躇しながらそう尋ねると、
周くんは私を見て、答えた。


「……カンパニーから家に帰ってくる途中、交通事故に巻き込まれたんだ。

体力の戻ってなかった体で無理をしたから……周りが見えないぐらい、ふらふらだったのかもしれない…。」


その時……九条が近くにいたんだ。


その状況なら確かに…

九条が事故を防げたかもしれない、と周くんが思うのもわかる。


私は、周くんを見上げながら言った。


「…つらいこと話させちゃって、ごめんなさい…。」


すると周くんは、弱々しく微笑んで答えた。


「ううん、……いいんだ。

聞いてくれて、ありがとう。」


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