百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
周くんは、そう言うと、
ぴたり、と立ち止まって私に言った。
「詠ちゃん…。
遥は…“敵”だよ。信用しちゃ、ダメだ。」
それは、前にも周くんに忠告された言葉と
一緒だった。
私は、手のひらをぎゅっ、と握って、周くんに言う。
「…でも今日の遥、周くんを紺から守ってたように見えた。
“契約”が、どう、とかって言ってたし…。」
すると、周くんは視線を落として答えた。
「カンパニーに入る時に、僕を利用して契約を結んだだけだろう。
……九条を、いい奴だ、なんて思えない。」
ズキ…、と心が痛んだ。
…周くんの気持ちも…わかるけど…。
その時、周くんが私の手を取った。
はっ、と、周くんの瞳と目が合う。
「詠ちゃんまで、九条に渡したくはない。
……アイツの所に行くぐらいなら、ずっと僕の隣にいてほしい。」
…え………?
周くんは、目を見開く私に続けた。
「最初は、加護者だから、姉さんと重なって見えていたのかもしれない。
でも一緒に過ごしていく中で、詠ちゃんを、詠ちゃんとして守りたくなった。」
私は、ただ、周くんをまっすぐ見つめる。
目を、そらせない。