百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


周くんは、そう言うと、
ぴたり、と立ち止まって私に言った。


「詠ちゃん…。

遥は…“敵”だよ。信用しちゃ、ダメだ。」


それは、前にも周くんに忠告された言葉と
一緒だった。

私は、手のひらをぎゅっ、と握って、周くんに言う。


「…でも今日の遥、周くんを紺から守ってたように見えた。

“契約”が、どう、とかって言ってたし…。」


すると、周くんは視線を落として答えた。


「カンパニーに入る時に、僕を利用して契約を結んだだけだろう。

……九条を、いい奴だ、なんて思えない。」


ズキ…、と心が痛んだ。


…周くんの気持ちも…わかるけど…。


その時、周くんが私の手を取った。

はっ、と、周くんの瞳と目が合う。


「詠ちゃんまで、九条に渡したくはない。

……アイツの所に行くぐらいなら、ずっと僕の隣にいてほしい。」


…え………?


周くんは、目を見開く私に続けた。


「最初は、加護者だから、姉さんと重なって見えていたのかもしれない。

でも一緒に過ごしていく中で、詠ちゃんを、詠ちゃんとして守りたくなった。」


私は、ただ、周くんをまっすぐ見つめる。

目を、そらせない。



< 242 / 512 >

この作品をシェア

pagetop