百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
そして、周くんは、熱のこもった瞳で私を見た。
「だから………………」
どくん!
心臓が、大きく鳴った。
ま………まさか…………
周くん…………………
私の緊張が、最高潮に達した時
周くんの手が、すっ、と離れた。
……!
すると、周くんは、優しく微笑んで、
口を開いた。
「………ごめん。
急に手なんか握っちゃって。」
その言葉に、ふっ、と体の力が抜ける。
「着いたね。
…詠ちゃんにすべてを伝えられてよかった」
そう言った周くんの言葉を聞いて辺りを見渡すと
そこは私のおんぼろアパートの目の前だった
ぜ………
全然気づかなかった。
すると、周くんが、にこっ、と微笑んで
言った。
「……聞いてくれて、ありがとう。今日も、楽しかった。
また、どこかに一緒に行ってくれる?」
私は、咄嗟に答える。
「い…行く行く!どこへでも……。」
すると、周くんは、すっ、と歩き出して、
私に手を軽く振った。
「…じゃあ、また学校でね。
詠ちゃん。」
私は、はっ!として、周くんに声をかけた。
「あの!」
周くんが、くるり、と振り返る。
私は、周くんを見つめながら、尋ねた。
「周くんは……どうして、事務所に入ったの…?」