百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


すると、周くんは小さく目を見開いた。

そして、まっすぐ、私を見つめ返す。

強い意志を宿した瞳が私をとらえて、周くんは口を開いた。


「九条の代わりに、紺に復讐するためだよ。

…あいつの思い通りには、絶対させない。」





私は、言葉を失った。


……“復讐”が、目的だったんだ………。


すると、周くんは困ったように微笑んで、
私に言った。


「…僕は、ただの善意で芝さんに力を貸しているわけじゃないんだ。

…幻滅した?」





私は、ぶんぶん、と首を横に振る。

すると、周くんは「…そっか…よかった。」と、呟いて

じゃあ、またね。と私に手を振って、歩き出した。


遠ざかる周くんの背中を見て、はあっ!と、大きく呼吸をする。


……初めて、周くんの心に近づいた。

初めて……周くんが、私に話してくれた。


私は、どきどき、と鳴る胸を押さえて、アパートの方へと歩き出す。


……さっき、びっくりした…。


…告白されるのかと思った。


……バカだ。

そんなはずないのに。


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