百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は自分の部屋の前で、ぴたり、と止まった


「どうして帰れないの…?

まさか…今日のことで紺と何かあったの?」


すると、遥が少しの沈黙の後、答えた。


『…そんなんじゃねぇよ。

もう、部屋も直ってるしな。お前に頼る必要が無くなっただけだ。』


………えっ?!


私は、驚いて尋ねた。


「部屋、直ってるの?!

一ヶ月ぐらいかかるんじゃ………」


その時、ぱっ、と今日の遥が一心くんに
言った言葉が頭に蘇った。


“割れた水槽と魚、元に戻しといてくれるか?お前なら、一時間もあれば直せるだろ?”


………


“一時間もあれば直せる”……?


私は、急いで玄関から自分の部屋に入ると
窓から遥の部屋を覗いた。

すると、大きく空いていた金棒の穴は綺麗に塞がっている。


「騙したの?!壁、すぐ直るんじゃん!」


もしかして、私の部屋に住む必要もなかったんじゃない?!


すると、遥が、くすくす笑う声が聞こえた。


『怒んなって。……俺は詠と一緒に寝れて楽しかったけど?』


紛らわしい言い方すんなっ!


私は、気になっていることを遥に尋ねた。


「そういえば、遥、どうして今日水族館に
来れたの?

紺は、遥に連絡してなかったんでしょ?」


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