百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
確かに、紺は遥を見た時、“連絡をしていないはずですが”と言っていた。
すると、遥は、さらっ、と、答えた。
『加護者の鬼火銃同士なら、相手がどんな状況にいるのか、いくら離れててもわかるんだよ。』
え……?
私は、自分の首に輝いている、鬼火銃の
ネックレスを手に取りながら眺めた。
…これで、私の危険に気づいてくれたの……?
とくん、と胸が鳴る。
「わざわざ、助けに来てくれたの……?」
私の声に、遥は、少しの間の後、答えた。
『…勘違いすんな。
俺は、狐野郎の好きにはさせたくなかった
だけだ。』
うっ。
…そうだよね。
敵対組織の私と遥は、命張って助けるほどの仲じゃないもんね。
……でも。
やっぱり、遥は、人を簡単に裏切るような人じゃない。
その時、電話の向こうから、ガタン!と、
大きな音が聞こえた。
その瞬間、遥の舌打ちが聞こえる。
「ど、どうしたの……?」
私が尋ねると、遥は、素早く答える。
『じゃ、そういうことだから、俺のことは
もう気にすんな。
お前はずっと周に守られてればいいんだよ。“詠ちゃん”』