百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
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「紺様。こちらの戦力は整いました。
…ですが、やはりあの時“佐伯 詠”を引き込めなかったところは大きいですね。」
フォックスカンパニーの社長室。
いつもの黒スーツに身を包んだ八雲が、
メガネを押し上げながら、紺にそう言った。
紺は目を細めて少し沈黙した後、小さく口を開いた。
「…手下に引き込もうとしたから、失敗したのかもしれない。
……すこし、やり方を変えてみようか。」
その言葉に、八雲は「“やり方”…ですか?」と、眉を寄せる。
紺は、微笑を浮かべて静かに言った。
「仲間に入れるのではなく、事務所の戦力
として成り立たないようにすればいい。」
八雲が、首を傾げると、紺は、コツコツ、と歩き出して続けた。
「…遥君は狐の面の方で使ってますから……今回はもう一人の方を使いましょうか。」
不気味にそう言い放つと、ギィ…、と扉を
開けて、紺は研究室へと歩いて行った。