百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

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「わざわざ送ってくれて、ありがとう。」


土曜日の昼下がり。

私は周くんと事務所を出て、アパートまで
並んで歩く。

周くんは、水族館で私が狙われた後

いつも家に帰る時に送ってくれるようになった。


……やっぱり、優しいな…。


こそこそ、と見ていると、ふいに周くんがこちらを見た。


「?どうしたの?」


ばちーん、と目が合って、私は顔を背ける。


「や…何でもないよ。」


見惚れてた、なんて言えない……。


周くんは、アパートに到着すると、思い出したように私に言った。


「そういえば芝さんが“最近、妖たちが騒がしいから浄化できるようにしておけ”って言ってたから、準備しておいてね。」


私は、その言葉に、ぴくり、と反応する



……“妖たちが騒がしい”…?

やっぱり、竜ノ神が動き出す前兆だったり
するのかな……。


するとその時。

ぽんぽん、と、私の頭を周くんが優しく撫でた。


っ!


思わず顔が赤くなると

周くんが、にこ、と笑いながら言った。


「そんな不安そうな顔しなくて大丈夫だよ。

頼りないけど……僕がいるから。」

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