百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

八雲は、不気味な笑みを浮かべながら、
メガネをクイッ、と上げて言った。


「これはいただいて行きます。

…では、また後ほど。」





「待って!」


私が叫ぶのと同時に

八雲は、シュン!と、その場から消える
ようにいなくなってしまった。


…!

お………鬼火銃を奪われた…!


すると、その時

雅が私をギッ!と睨んだ。


「おい、詠!…なんでもっと警戒しないんだよ!

ほんっと…隙だらけ!バカなの?」


急にツンツンになった雅を、私は驚いて見つめる。


そ…そうだよね。

あれは、操られてたからであって、本来の雅は“こう”だよね。


雅は、はぁ、と息を吐いて私に言う。


「ってか、少しは抵抗しろよな。なに受け
入れてんだよ。

男がこーんな数十センチの距離に近づいて、何もしないわけないだろ、バカ!」


私は、申し訳なく雅に答える。


「な…なんだか、動揺しちゃって…。

雅だったから……抵抗できなかった、というか……。」


普通の変態とか、ストーカーとか、見知らぬ男とかだったら、全力で抵抗したけど……

すると、それを聞いた雅が、かぁっ、と頬を赤くした。

そして、ふいっ、とそっぽを向いて口を開く。


「な…なんだよそれ…。

俺だって男なんだから…あんま無防備に
すんなよ…。ほんっと…あんたは……。」


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