百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


……“胸騒ぎ”…?


すると、次の瞬間。

芝狸がピク!と尻尾を揺らして、立ち上がった。


『なんじゃ?!この妖気は………。』


芝狸が、バタバタと事務所を駆け回る。


え?え??

いきなりどうしたの?!


私と周くんが驚いてみていると、
芝狸はカッ!と目を見開いて言った。


『恐ろしく強大な妖気じゃ!

…竜ノ神ではないが…今までにない気配じゃわい!』





周くんは、私と顔を見合わせる。

そして、無言で頷くと、芝狸を抱き上げて事務所を出た。


****


タタタ…、と住宅街を走り抜ける。

私は、周くんの腕に収まっている芝狸を
見ながら尋ねた。


「まさか…前の鬼みたいに、竜ノ神の妖気に誘われて、強い妖がこの世界に入り込んだの?」


すると、芝狸が鋭い目つきで答える。


『その可能性が高いじゃろうな。

…カンパニーの奴らが連れてきた、という
場合もあり得るが…。』


私は、どくん!と胸が鈍く鳴った。

鬼と戦った時、私は芝狸がいなければ
死んでいたかもしれない。


あれほど上級の妖と、また戦うとなると……

この、五発しか撃てない鬼火銃じゃ、厳しいかもしれない……!


『あっちの広場のほうじゃ!』


芝狸が、妖気を感じた方へと私たちを誘導
していく。

なぜだか、どくん、どくんと鳴る心臓の音がいつもより大きく聞こえた。


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