百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


じょ………

冗談言ってる場合じゃない…!

気を抜くと、吹き飛ばされる……っ!


その時

周くんが、さっ、と私の前に立った。

ドキン!と胸が鳴る。


私が驚いて見上げると

周くんはこちらを振り向かずに言い放った。


「…この天狗は、僕に任せて。

詠ちゃんは、なるべく五発の鬼火銃を
使わないように、温存してて!」


周くんの背中が私を庇うように目の前にある


……周くん………

私の代わりに、自分の鬼火銃を使って
この天狗を浄化するつもり……?

その時

芝狸が、ぴょん、と周くんの腕から
飛び降りて、私に向かって言った。


『小娘は、八雲を追うんじゃ!

紺がここに来ていない以上奴を追い詰める
しかないわい!』





私は、はっ!と気づく。

そういえば、紺の姿がここにはない。

…まさか、竜ノ神を追って他の場所にいるの…?


私は、こくん!と頷くと

狐の面の集団の中に立つ、八雲と遊馬の方へと走り出した。


周くんが、天狗を引き受けてくれた以上
私は竜ノ神を探さなくちゃ…!


…私にできることを、やり切ろう…!


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