百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「……佐伯……?」
その声が
私の体に、すぅ…っ、と入ってくる。
………あぁ。
遊馬の声だ………。
その時、私の目から、無意識に涙が溢れた。
ずっと我慢してた気持ちが、こぼれ落ちる涙とともに、どっ!と溢れ出す。
遊馬が目を見開いて
無言で私の方へと体を向けた。
「………なんで言ってくれなかったの…?」
私は、心の中の声をそのまま口に出していた
遊馬が、私を見下ろしながら、呟く。
「…言ったら、お前も、周も、止めただろ?
余計な心配させたくなかったんだよ。」
私は、ぎゅうっ、と、遊馬の服を握りしめた
「何も言われない方が、心配するよ!
……本当に……敵になっちゃったのかと思ったんだよ……!」
止まらない涙に、私は遊馬の服に顔をうずめた。
遊馬は、そんな私を軽く抱き寄せて
小さく、優しい声で私に言った。
「…ごめんな。
…でも、最後まで俺に攻撃しないでくれて
ありがとう。」
……!
その時、わっ!とさらに涙が溢れ出た。
……いくら敵になったって。
……いくら鬼火銃を向けられたって。
私は遊馬に銃口を向けることなんて
出来なかった。
この日が来るのを…………
私たちの元に、帰ってきてくれるのを
ずっと信じて、待ってたよ…………。