百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
遊馬は、腕組みをして芝狸を見る。
「もちろん。紺の社長室に侵入した時、しっかり情報をいただきました。
…社長室に入る前に、あの“九条 遥”と廊下で鉢合わせたんですが、見逃してくれたんですよね。」
その言葉に、私は、はっ、とする。
……遥…
もしかして、遊馬が偽の狐の面をつけていることに勘付いていたけど
気づかないフリをしていてくれたの?
私にも、それとなく
“遊馬のことは心配するな”
的なこと言ってたし。
すると、周くんが遊馬に尋ねた。
「それで…竜ノ神は、一体どこに?」
その言葉を聞いて、遊馬が真剣な表情で
答えた。
「ここから北に行った夢ヶ原と隣の地区との境に、デカい山があるんだが
竜ノ神はそこに隠れているみたいだ。」
どくん。
胸が低い音を立てた。
……竜ノ神の居場所が分かったんだ!
遊馬は「それ以上詳しい情報は、さすがに
盗めなかったけど……」と、ちら、と雅の方を見る。
すると、視線に気づいた雅が、小さく息を吐いて答えた。
「…場所はあんたが言った山で合ってるよ。
でも、早く行かないと……紺は、もうすでに遥を連れて山に向かったよ。」