百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
緑の木々に囲まれた山道を走っていくと
どこか静かすぎることに気がついた。
私は、走りながら周くんに尋ねる。
「妖が、一匹もいないね。
……それどころか、動物も、鳥さえいない
みたい。」
周くんは、私の言葉に辺りを見回して答えた
「みんな、竜ノ神の妖気で、どこかに隠れているのか……
それとも、紺が追い払ったのかな…。」
遊馬が、眉を寄せて口を開いた。
「紺の野郎、本気で今日、竜ノ神を仕留めるつもりみたいだぞ。
…この山の周り、妖用の結界が張ってあって中からは出られないようになってるみたいだ。」
“妖用の結界”…?!
すると、芝狸は真剣な表情で言った。
『どのみち、わしらも竜ノ神の宝石を取る
までは出るつもりはないんじゃ。
……皆の者!今日こそ、本気で竜ノ神を追うぞ!』
私は、その言葉に、どくん、と心臓が大きく鳴った。
……そうだ。
今日こそ、私は加護者として
事務所に貢献しなくっちゃ。
周くんと遊馬も
芝狸の言葉に力強く頷いた。
そして私たちは
紺のいるはずの山頂を目指して
山道を走り抜けて行ったのだった。