百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


艶のある低い声が、辺りに響いた。





驚いてキョロキョロと声の主を探すと、

ザァッ!と、突風が辺りに吹く。


そして次の瞬間

私たちの目の前に、二つの人影が現れた。


一つは、紫の着物を着た、紺。

そしてもう一つは…………


「…遥…………!」


私が呼ぶと、遥は、ちら、と私の方を見た。


…………やっと…会えた………!


しかし、遥はとても冷たい瞳をして、表情など全く無い。


……まるで……心が無いみたい。


すると、遥が私たちを見て口を開いた。


「………悪いけど………竜ノ神の宝石は俺がもらうぜ……。」





その言葉に

辺りの空気が、ピン、と張り詰める。


……遥………。


やっぱり、自分の願いのために…紺に宝石を差し出すつもりなんだ…。

…心のどこかでは、紺に渡したくないって、思ってるはずなのに。



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