百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
すると、それを見ていた周くんが
はっ!と何かに気づいたように、空に向けていた鬼火銃を降ろした。
「周?どうした?!」
遊馬がそう叫ぶと、周くんは空を見上げながら口を開いた。
「……おかしい……。」
……え?
私は、首をかしげながら周くんを見る。
…どういうこと?
すると、周くんはまっすぐ竜ノ神を見つめながら言った。
「あれだけ動き回っていて、妖力だって使っているはずなのに
…竜ノ神の妖気が全く感じられない。」
その言葉に、遊馬も、はっ、として手を止めた。
そして、小さく呟く。
「…確かに、この山に着いてから社長は“紺の気配がする”としか言ってないな。」
!
そういえば……
芝狸は、紺の気配を感じても
竜ノ神の妖気は全く感じていなかった。
………どういうことだろう?
すると周くんは、少しの沈黙の後、口を開いた。
「……それに、いつもは人を見ただけで目にも留まらぬ速さで逃げ出す竜ノ神が
結界を張られているとはいえ、こんな…僕たちと遊ぶかのように飛び回ってるなんて信じられない。」