百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、周くんの言葉を聞いて、考え込む。


………確かに…

あれだけの上級の妖が、妖気を全く出さないなんて、ありえない。

“本物の竜ノ神”なら……絶対妖気を出すはずなのに………


その時

その場にいた三人は、はっ!と同時に可能性に気づく。


ま………

まさか………!


あの竜ノ神は本物じゃない?


その時、私の頭の中に
森の奥の神社の光景が浮かんだ。

私は、ばっ!と芝狸の方を見て叫ぶ。


「妖界と繋がってるあの神社だ!

あそこになら、本物がいるかもしれない!」


すると、それを聞いた芝狸は

頭上の竜ノ神を見つめて、そして答えた。


『確かに…あの竜ノ神は、本体が飛ばした
偽物かもしれん。

小娘の言う、“可能性”に賭けてみるか!』


私たちは、芝狸の言葉に、力強く頷いた。

遊馬が、苦笑しながら芝狸に言う。


「これで違ってたら、社長は相当、紺に引き離されますね。」


芝狸は、迷いを振り切るようにブンブン、と頭を振って、周くんに飛びついた。


『わしは、部下のお前たちを信じるからな!』


私たちは、ぎゅっ、と芝狸にしがみ付いた。

それを見て、紺と遥が、動きを止める。

と、次の瞬間

再び私たちは、気の遠くなるような感覚と共に、その場から姿を消したのだった。



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