百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


『卑怯だぞ!紺!!』


芝狸が、紺を睨んでそう叫ぶ。

すると紺は、何でもないように、さらり、と答えた。


「芝だって、こっちにそこの青年を潜り込ませて、カンパニーの情報を盗んだじゃないか。

………これでおあいこだな。」


芝狸は、それを聞いて、ぐっ、と口ごもる。

私は、ぱっ、と遥を見あげた。


………遥……………

本当に、紺の言いなりになるつもり………?


“今の俺は、葛ノ葉 紺に逆らえない。”


遥は、前にそう言ってた。


“…俺は、“俺の願いを叶えるため”に、カンパニーに宝石を差し出す。

…悪いけど、お前にも、周にも…宝石を渡す気はねぇから。”


………。


私は、遥の言葉を頭の中で思い出しながら、遥をまっすぐ見つめた。

周くんも、無言で遥を見つめている。

すると、紺が遥に向かって口を開いた。


「さぁ、遥君。決着の時だ。

…………私にその宝石を寄越しなさい。」





私たちは、目を見開いて遥を見上げる。


止めたいのに……

叫びたいのに…


………声が出ない………!


………遥…………

やめて…………………!


私が、ぎゅっ、と手のひらを握りしめた

その時だった。


「……“そして、十位は乙女座のアナタ。”」


………

…………え?


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