百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


ふと聞こえた遥の声に

私は驚いて、ふっ、と体の力が抜ける。


「“今日のアナタはまさに、“二兎追うものは一兎も得ず”です。

本当に大切なことを見極めて、一つの選択肢に賭けましょう。”」


淡々と、そう続ける遥。


………何を言っているの…?


私が動揺して遥を見つめていると

遥が、私を見て言った。


「だよな…?詠。」


綺麗な瞳が、私をとらえた。

そこで、はっ、と今朝の占いを思い出す。


……今、遥が言ったのって………

いつも私が見てた占い…………?


あんなに、“インチキ占いだ”ってバカにしてたのに…。


紺が、少し眉を寄せて口を開いた。


「何を言っているんです?

………遥君、早く、それを……………」


すると、遥が、ふっ、と息を吐いて目を閉じた。

そして、ゆっくりと瞼を開ける。





私は、その姿に、目を奪われた。

遥の瞳は

まるですべてのしがらみを振り切って、悩みを消し去ったような澄んだ色をしていた。



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