百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
第5章追憶の真実
「九条、まだ見つからないのか?」
竜ノ神との決戦を終えてから一ヶ月。
季節も変わり、辺りの景色はすっかり夏色に変わった。
事務所に集まった私と周くんは
遊馬のその言葉に無言で視線を落とした。
………あれから……
遥は、ぱったりと消息を絶ってしまい、
生死さえもはっきりしない。
何回か、アパートの窓から隣の遥の部屋を
覗いたり、玄関の扉を叩いて呼びかけたけど
部屋にいる様子は全くなく、それどころか、この一ヶ月帰ってきてもいない。
私は、最後に見た遥の姿を頭に思い浮かべる。
……あの日、遥は紺に鬼火銃で撃たれてた。
あの傷が、もし、命に関わるほど深かったとしたら………。
どくん
心臓が鈍く鳴って、サッ、と血の気が引く。
私は、震える心を必死に落ち着けて、周くんを見た。
周くんも、無言でうつむきながら、必死で動揺を抑えているように見えた。