百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、サングラスを外したその金髪の青年を見て、声を上げる。
「……雅…!どうしてここに………?!」
黒いジャケットを羽織った雅は、事務所の中をぐるり、と見渡して、ぼそ、と呟いた。
「…遥がここに………いるわけないよな。」
驚いて雅を見つめる周くんと遊馬は
その言葉を聞いて、はっ、とした。
遊馬が雅に尋ねる。
「お前も、九条の居場所、知らないのか?」
すると、雅は、つかつかと部屋に入って来てふぅ…、と息を吐くと答えた。
「遥とはあれから、連絡取れないんだ。
……紺も見つけられないぐらいだからな…。今……どこで何してんだか……。」
私は、少し胸をなでおろす。
……紺に捕まっているわけじゃないんだ…。
じゃあ、まだ生きてる可能性もあるってことだよね。
すると、雅は、さっきの私の問いかけに答えるように、私を見て続けた。
「今日ここに来たのは……あんたらに話しておきたい事があったから。」
“話しておきたい事”……?
雅は、すっ、とソファに腰掛けると
手に持っていたバッグから、薄紫色の書類を取り出した。