百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


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“院内は走るな”


そんなことは、もう頭になかった。

受付で病室を聞いた後、一目散に向かい

“結城”のプレートを見つけた瞬間、扉を勢いよく開けて入った。





すると、そこには目を閉じてベッドに横たわる凛の姿があった。

その横には、少年の姿。


……こいつは………凛の弟か。

確か、“周”って言ったよな。


驚いて俺の顔を見つめる少年に、上がる息を落ち着かせながら尋ねる。


「…おい、姉さんの容体は?」


すると、弟は戸惑いながら答えた。


「…命に別条はないらしいです…朝から体調が悪くて、昼頃に急に僕の前で倒れて…

………ずっと、バイトで休んでなかったから………過労だろう、って先生が…。」


俺は、それを聞いて少し胸をなでおろす。


……命の危険はねぇのか……。


よかった…………。


すると、弟が、ぽろぽろ涙を流し始めた。

目を見開いて見つめると、弟は静かに言った


「……僕のせいだ……。僕が、姉さんの力になれないから……。」



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