百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
………。
俺はその姿を見て、ぽん、と弟の頭に手を乗せて、優しく撫でた。
はっ、とする少年に俺は優しく語りかける。
「お前、いつも姉さんに迷惑かけないように家事とか料理とかしてたんだろ?
……凛から聞いてるよ。お前のせいじゃないから、泣くな。」
すると、弟は、驚いたように俺の顔を見た。
「……あの…どうして、姉さんを…?
もしかして、“遥さん”ですか?」
!
その言葉に、俺は眉をぴくり、と動かして、弟を見返す。
「……なんで……俺の名前……。」
すると、弟が困ったように微笑んで言った。
「…姉さんが、いつも言うんですよ。
“私の大切な人だ”って。」
!
俺は、その瞬間
ぐっ!と拳を握りしめた。
そして、目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
………凛は、カンパニーに無理やり働かされて、倒れたんだ。
凛の話では、妖を浄化する“鬼火銃”っていうやつのせいで体力が相当奪われるらしい。
……“加護者”なら、なおさら。
いくら借金があるからといっても
このまま、凛をカンパニーに置いておいたら次は本当に死んじまうかもしれない。
………そんなこと
そんなこと、俺がさせない。