百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
俺は、ゆっくり目を開けて、弟の頭を軽く撫でて言った。
「……大丈夫だ、周。姉さんのことは心配すんな。
俺が…絶対お前の姉さんを守ってやる。」
弟は、大きく目を見開いて俺を見上げた。
「………“守る”…って……?」
俺は、そう呟く弟に、そっ、と答えた。
「凛から“周”、っていうデキる弟の話はよく聞くんだよ。
…お前は凛の宝物だから、お前も守る。」
少年は、驚いて俺を見つめ、そして小さく頭を下げた。
そして、出て行こうとする俺に向かって言った。
「…遥…さん!あの……
姉さんを頼みます……!」
俺は、病室の扉を開けながら口を開いた。
「………わかった。」
俺は、パタン、と引き戸を閉めて
そして、“ある場所”へと歩き出した。
心は、全く迷っていなかった。
………俺が、凛と、凛の大切なものを守るんだ。
胸の印が、小さく熱を持った気がした。