百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
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逢魔街十三番地の奥の奥。
入り組んだ、迷路のような路地を抜けて
さらに先に建つ、一棟のビル。
見たこともない異形な妖どもが、うようよ警備しているように飛び回る入り口から入り
さらに奥まで進んだところにある“社長室”。
その重苦しい扉を開くと、部屋の中で一人の男が大きな椅子に座っているのが見えた。
葛ノ葉 紺…………。
俺が、無言で扉を閉めると、紺は俺の顔を見ながら言った。
「…来ると思ってましたよ。
恋人想いのあなたならね。」
俺は、鋭い目つきで紺を睨みながら口を開いた。
「………俺がカンパニーに入るなら、どんな条件でものむんだよな?」
すると、紺は笑みを浮かべたまま答えた。
「えぇ。…ちゃんと約束は守りますよ。
……私と……どんな“契約”を結びますか?」
どくん。
頭の中で、“やめろ。”と声がした。
“これは、危険な取り引きだ。
今すぐ引き返せ。”
………だけど。
「凛の借金を消して、ここから解放しろ。
凛の家族にも、手を出すな。」
紺が、俺の言葉を聞いて、ニヤ…と笑った。
そして、少しの沈黙の後、静かに答える。