百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
過去の涙
「遥!……なんでこんなことしたの?!
私が入院してる間に何があったの?」
契約の日から三日後。
俺のアパートへとやってきた凛は、ものすごい形相で俺に詰め寄った。
「遥がカンパニーに囚われるんなら、私が解放されても意味ないじゃない…!」
「意味はある。」
俺は、今にも泣き出しそうな凛を抱き寄せた
ぴくん、と凛が体を震わせた。
俺は、凛の耳もとで囁く。
「凛は、弟と幸せに、普通の生活を送れ。
もう、今まで全部背負ってやってきたんだ。これからは、力抜け。」
俺は、凛から、すっ、と離れる。
そして、この先の言葉を察しているように小さく震えて俺を見る凛に
俺は心を冷たく凍らせて、言い放った。
「………もう、ここには来んな。」
「!」
凛の瞳から、つぅ…、と涙が流れた。
言葉も出ない様子で、ただ、俺をまっすぐ見つめていた。
俺のシャツを離そうとしない。
「…………離せ。」