百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


俺が顔を伏せてそう言うと、凛は、やっと、声を出した。


「………嫌……やだよ……。

遥の隣は……私の…ものでしょ…?」





ズキン、と心が痛んだ。

凛の泣き顔が、俺の心に突き刺さる。

こんな顔をさせているのは、俺だ。

凛が一番聞きたくない言葉を浴びせているのは、俺だ。


……だけど

俺はもう、引き返せない。


お前だけは、カンパニーから何をしてでも引き離す。

俺は、目を合わさずに言った。


「……もう、お前の“子守り”はうんざりなんだよ。

俺がずっと我慢してたの、気づかなかったのか?」


……嘘だ。


俺は、凛といて、嫌だったことなんて一度もない。

凛といない時間の方が、胸が苦しくてしょうがなかった。


「俺は、もうお前に呼び出されるのはごめんだ。

………俺たち、終わりにしよう。」


心にもない言葉たちが、次々と口から出ていって

凛の心を傷つけた。

凛は、目を大きく見開いて、止まらぬ涙が頬を濡らしていく。


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