百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


遊馬が、ふと小さく声を出した。


……?


私も、遊馬の視線の先を見る。


「……!あそこは………」


そこには、闇丸の記憶の中で見た

遥と凛さんが通っていた公園があった。

夏の日差しに照らされて光る緑の木々。

そして、その木々が屋根になるようにして、一つのベンチがあった。

私たちは、ふと立ち止まる。


……ここに……確かにあの二人はいたんだ。


今では、二人ともここにはいない。


遥の姿はなかった。


遊馬は、少しベンチを見つめた後、私に向かって口を開いた。


「…九条は、必ず生きてるよ。

絶対俺たちが紺より先に見つけてやろうぜ」


私は、遊馬の言葉に込み上げてくる思いを抑えながら、こくん、と頷いたのだった。

< 392 / 512 >

この作品をシェア

pagetop