百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
遊馬が、ふと小さく声を出した。
……?
私も、遊馬の視線の先を見る。
「……!あそこは………」
そこには、闇丸の記憶の中で見た
遥と凛さんが通っていた公園があった。
夏の日差しに照らされて光る緑の木々。
そして、その木々が屋根になるようにして、一つのベンチがあった。
私たちは、ふと立ち止まる。
……ここに……確かにあの二人はいたんだ。
今では、二人ともここにはいない。
遥の姿はなかった。
遊馬は、少しベンチを見つめた後、私に向かって口を開いた。
「…九条は、必ず生きてるよ。
絶対俺たちが紺より先に見つけてやろうぜ」
私は、遊馬の言葉に込み上げてくる思いを抑えながら、こくん、と頷いたのだった。