百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「じゃあ、周くん!
私はカンパニーに行くよ。心配しないで!」
「…っ詠ちゃん…!」
私はそう言うと、周くんに背を向けて走り出した。
頭の中は、遥のことでいっぱいだった。
胸が、どくん、どくん、と音を立てる。
……遥は、生きてる。
私が……絶対助けるんだ…!
…と、その時だった。
ぐい!
「!」
後ろから手を引かれて、ぎゅっ!と温かな感触が体を包んだ。
私の体に回された腕が、ぎゅ……と私を抱きしめる。
……え………?
驚いて体をこわばらせると、さらり、と、私の頬に琥珀色の髪の毛が触れた。
「……あ…まね…くん………?」
私が顔を見るために離れようとした瞬間
ぎゅっ!と強く抱きしめられて、耳元で周くんの声が聞こえた。
「………………行くな……。」