百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



……ってことは、このアパートの住人、
大家さんと私と、コイツの三人?!



私が動揺して頭を抱えていると

青年は、すっ、と慣れたように部屋の中に入ろうとする。



……信じられない。


本当にここに住んでるんだ。



私が、じっ、と見つめていると、
彼は急に、ピタリ、と動きを止めた。







くるり、とこちらを見る。



な…何……?



私が黙って見つめていると、しぃん、とした中、低い声が響いた。



「…一つ忠告。


お前、あの狸のおっさんに乗せられて、竜ノ神探しを手伝わされてんだろうけど

バイト感覚でこの世界に踏み込んでんなら、すぐに失せな。」







彼はさっきまでとは違う、真剣な瞳で私を見つめる。



「妖の世界は、お前が思ってるほど簡単でも、優しくもねぇ。」



彼の言葉が、体の中に染み込んでいく。


そして少しの沈黙の後、九条は静かに続けた



「それでもお前が狸のおっさん側につくなら

……俺たちは“敵どうし”だな。」



え?



どきん。



胸が小さく鳴って、私は目を見開いた。



それって、どういう意味……?



その時、すっ、と部屋に入っていく彼の胸元に、銀色のネックレスが光るのを

私は見逃さなかった。



あれって………

“鬼火銃”……?



真相を全て語らず隠して。


謎に包まれた青年は、ピシャリ、と部屋の窓を閉めたのだった。



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