百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
どくん…!
心臓が大きく鳴った。
「…どういうこと…?
遥にとって、私はそんな存在じゃ…」
『……いえ。
……遥君を見てればわかります。』
私が小さく呟くと
紺は真剣な表情のまま答えた。
『……人間とは、愚かなものですね。
愛なんてもののために利用される。』
私は、紺の言葉に
遥の姿を頭に思い浮かべた。
………遥。
絶対に、ここに来てほしくない。
ここに来たら…
遥は紺の思い通りに殺されてしまうかもしれない…。
遥は、今、命を追われて逃げてるんだ。
…私なんかを助けに来ないよね…?
その時
紺が、ピクリ、と体を震わせた。
『……来たか……芝め…。』
!
すると、紺は私を見下ろして
すっ、と手を突き出した。
ヒュン!
風を切るような、小さな音が聞こえた。
しかし、なにも変化が起こった様子はない。
……何をしたの…?