百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


その声は、今までで一番低く
心の底からの“怒り”の感情がこもっていた。

自分に向けられた声ではないと分かっていても、体が震える。

紺は、ニヤリ、と笑みを浮かべながら周くんに答えた。


『事務所の皆さんお揃いで……まさか、ここまで追ってくるとは思いませんでしたよ。

…彼女を返すわけにはいきませんけどね。』


周くん達の顔が一気に険しくなる。

紺は、表情を変えずに言葉を続けた。


『遥君が現れて、私の計画が終わったら
彼女は解放しましょう。』


“計画”……?

紺を裏切って芝狸に竜ノ神の力を与えた
遥を“殺す計画”ってこと…?


その時、遊馬が紺に向かって叫んだ。


「今まで散々人間を道具のように使っていたお前が、必要の無くなった佐伯を簡単に返すなんて信じられるか!

………今すぐ、佐伯を渡せ!」


…!


遊馬も、真剣な顔をして紺を睨んでいる。

私が声を出せずに見つめていると、紺が不気味に笑って言った。


『……力ずくで奪う気ですか…?

…この私を倒して……?』


< 438 / 512 >

この作品をシェア

pagetop