百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
その声は、今までで一番低く
心の底からの“怒り”の感情がこもっていた。
自分に向けられた声ではないと分かっていても、体が震える。
紺は、ニヤリ、と笑みを浮かべながら周くんに答えた。
『事務所の皆さんお揃いで……まさか、ここまで追ってくるとは思いませんでしたよ。
…彼女を返すわけにはいきませんけどね。』
周くん達の顔が一気に険しくなる。
紺は、表情を変えずに言葉を続けた。
『遥君が現れて、私の計画が終わったら
彼女は解放しましょう。』
“計画”……?
紺を裏切って芝狸に竜ノ神の力を与えた
遥を“殺す計画”ってこと…?
その時、遊馬が紺に向かって叫んだ。
「今まで散々人間を道具のように使っていたお前が、必要の無くなった佐伯を簡単に返すなんて信じられるか!
………今すぐ、佐伯を渡せ!」
…!
遊馬も、真剣な顔をして紺を睨んでいる。
私が声を出せずに見つめていると、紺が不気味に笑って言った。
『……力ずくで奪う気ですか…?
…この私を倒して……?』