百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、言葉を失った。

絶句したまま、紺を見つめる。


……う………

撃たれた…?


紺に鬼火銃が命中して喜ぶべき時なのに、私は、ざわっ!と胸騒ぎがする。


やけにあっさり…撃たれた…よね?

妖界まで来ておいて、こんな簡単に倒されるなんて………。


…と、その時

撃たれた傷を手で押さえる紺がニヤリ、と笑みを浮かべた。


…!


遊馬と雅は紺の様子に違和感を感じて眉を寄せる。

紺が笑みを浮かべたまま口を開いた。


『……言ったでしょう?

“君たちに私は倒せない”と………!』


「「!」」


遊馬と雅の顔が一気に引きつった。

すると、次の瞬間

紺の至近距離にいる遊馬と雅に、黒い矢が次々と放出された。

矢が頬をかすめた遊馬が雅に向かって叫ぶ。


「っ!雅!一旦引くぞ!!」


雲の地面に転がるように矢を避けた二人は

自分たちめがけて矢を飛ばした紺を険しい表情で見つめた。


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